大判例

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大阪高等裁判所 昭和29年(う)1297号 判決

原審は所論の如く昭和二十九年六月十日宣告の判決において、被告人が同年四月二日、四日、六日、の三回の窃盗事実と、被告人は同四月二十八日亀岡簡易裁判所において窃盗罪により懲役十月三年間執行猶予の言渡を受け、該裁判は同年五月十三日確定したものである事実とを認定しながら、被告人を懲役六月に処し四年間刑の執行猶予の言渡をしたのみで、右猶予の期間中保護観察に付する旨の言渡をしていないのである。

しかし本件被告人の如く前に禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予せられた者に対し一年以下の懲役又は禁錮に処し更に情状により刑の執行猶予を言渡すときは、刑の言渡と同時に猶予の期間中保護観察に付する言渡をする必要があることは、原判決言渡当時施行の刑法第二十五条の二第一項(現在は同項後段)刑事訴訟法第三百三十三条第二項後段に規定するところである。しからば原判決が保護観察に付する旨の言渡をしなかつたのは右各法条の適用を誤つたものでこの誤が判決に影響することが明らかである。

もつとも本件記録中の右確定判決の謄本によれば、亀岡簡易裁判所において執行猶予の言渡を受けた罪は、被告人が昭和二十九年四月八日犯した窃盗事実であることが認められるから、本件判決認定にかかる前示事実とは刑法第四十五条後段の併合罪であることが明らかである。かかるいわゆる余罪の関係にある罪について再度の執行猶予を言い渡す場合には、刑法第二十五条第一項に準拠すべきもので同条第二項及び第二十五条の二によるべきものではないとの判決(東京高裁昭和二十九年六月十五日第一刑事部判決高裁集七巻五号七九二頁、名古屋高裁同月七日第五刑事部判決判例時報三十一号二四頁)があるけれどもこの解釈は昭和二十八年法律第百九十五号による刑法改正以後においては、この改正の趣旨に反するので、当裁判所としては再度の執行猶予についてはすべて改正後の刑法第二十五条第二項第二十五条の二に準拠すべきものと解するから、右判例に賛同しない。(名古屋高裁昭和二十九年五月二十五日第四刑事部判決判例時報三十一号二五頁、福岡高裁同年九月二十日第一刑事部判決裁判所時報百六十九号一五〇頁、大阪高裁昭和二十九年(う)九一三号被告人中西幸太郎事件同月二十八日第四刑事部判決参照)。

よつて本件控訴を理由ありとし、刑事訴訟法第三百九十七条第一項第三百八十条により原判決を破棄し同法第四百条但書により当裁判所直ちに判決するに原判決が証拠により確定した被告人の所為に対し、刑法第二百三十五条第四十五条前段後段第五十条第四十七条本文第十条(判示(一)の罪を重いと認める)を適用して被告人を懲役六月に処し、尚情状特に憫諒すべきものがあると認めるから、刑法第二十五条第二項前段第二十五条の二第一項後段刑事訴訟法第三百三十三条第二項を適用して、四年間右刑の執行を猶予し、その間被告人を保護観察に付することとする。原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により全部被告人をして負担せしむべきものとし、主文のとおりの判決をしたのである。

(裁判長判事 岡利裕 判事 国政真男 判事 石丸弘衞)

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